遺産の調査および相続人の確定ができた上で、作成するのが遺産分割協議書です。
分割協議がまとまれば、相続人全員のものであった遺産が相続人ひとりひとりの個人所有物になります。遺産分割協議書とは、この協議の内容を記載した正式な文書です。
遺産分割協議書の作成が完了すると、各種の名義変更はスムーズに進めることが可能となります。
遺産分割協議書には決まった書式(書き方)はありませんが、いくつか注意点があります。
全員参加で全員合意が原則です。
家庭裁判所で相続放棄の手続きをした人は参加できません。
戸籍調査の上、間違いの無いように注意してください。
※全員の協議ですが、全員が承諾した事実があればそれでよく、全員が一堂に会して協議する事までは要求されません。
現実的には、1通の遺産分割協議書(案)を作成し、他の相続人に、この内容でよければ実印を押してもらう方法がよく取られます。
印鑑は実印を使わないと、不動産登記や銀行の預金の名義変更などの手続が出来ません。
不動産の場合、住所ではなく登記簿どおりの表記にしてください。銀行等は、支店名・口座番号まで書いてください。
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、法定相続人全員の実印で契印(割り印)してください。
遺産分割協議書には、実印の押印が必要ですが、それと共に印鑑証明書も添付してください。
以上が、遺産分割協議書を書く上での基本的なポイントとなります。
最後に、最近よくある法的な判断を必要とするケースについてお伝えしたいと思います。
相続人に未成年者がいる場合、未成年者は遺産分割協議が出来ませんので、下記の2つの方法から選択しなくてはいけません。
1)未成年者が成年に達するまで待ってから遺産分割協議をする
2)未成年者の代理人が遺産分割協議をする
通常、未成年者の代理人は親なのですが、親子揃って相続人となるケースが多くあります。
このような場合、親と子供の利益が相反することになり、親が子供の代理人として分割協議をする事が出来ません。
また、子供だけが相続人である場合であっても、数人の子供を一人の親が代理することもできません。このようなときには、未成年者一人ひとりのために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求します。
相続人の中に行方不明者がいる場合には、3つの方法が考えられます。
1)失踪宣告されるのを待って、遺産分割協議をする
2)不在者のための財産管理人を選任して、その財産管理人を交えて、遺産分割協議をする
3)家庭裁判所に遺産分割の審判を申し立てる
このどれかの方法を取ることになります。
相続人の中に認知症で協議できない者がいる場合、一時的にも意識が回復すれば遺産分割協議は可能です。
一時的にも意識が回復することがない場合には、成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立て、その成年後見人を交えて遺産分割協議をすることになります。
後になって、財産や債務が見つかることも考えられますので、その他一切の財産を○○が取得するという一文を加えておくことをお勧めします。